■世界のはちみつ
スペイン北部のアルタミラ洞窟の壁画には、ミツバチの巣とはちみつ採取のためとおぼしき縄梯子が描かれています。これは紀元前2万~紀元前8000年頃の旧石器時代に描かれたものです。またスペインのアラーニャの洞窟では、紀元前7000~6000年頃の中石器時代と思われる壁画に、ハチミツを集めている裸の女性が描かれています。はるか石器時代から、はちみつは人々に利用されてきた食物だといえます。
メソポタミア文明においては、養蜂をおこなっていたらしいことが、トルコのカッパドキア近くの遺跡の洞窟壁画から知ることができます。新石器時代、紀元前6500年前のものといわれています。
また古代エジプトでも養蜂がおこなわれており、紀元前1000年以上前のピラミッドから、壷に入ったはちみつが発見されています。ミツバチは王位のシンボルとして長く使われており、壁画に養蜂が描かれていることも。はちみつはまだまだ身分の高い者の食べ物・薬だったようですが、世界最古の薬物治療書「パピルス・エベルス」には、はちみつの薬用効果のみならず、糖尿病の記載も見られるそうです。
ギリシア神話では、アポロンの息子アリスタイオスが人間に養蜂を教えました。この頃はちみつは、人々の日常食べる食品として、蜜酒を造るだけでなく料理の味付けにも用いられ始めます。
旧約聖書によれば、約束の地カナンは「乳と蜜の流れる場所」であるとされ、はちみつは豊かさのシンボルとなっています。カトリックの教会では明かりとして蜜ロウソクを使用し、蜜ロウを採るためにミツバチを飼っていたそうです。
19世紀半ばまでは、巣を探し採集して、それを壊してはちみつを絞るという旧式養蜂がおこなわれていました。アメリカ人のラングストロスが取り外しのできる巣枠を考案し、その後人工巣礎などが考案されて、ようやく人間がミツバチを飼育管理するという近代養蜂の幕が開くのです。
■日本のはちみつ
「日本書紀」には、643年(皇極2)に百済の太子余豊が大和三輪山でハチを放したが繁殖しなかったという、朝鮮半島ですでに養蜂がおこなわれていたことをうかがわせる記述があります。その後「延喜式」に税として1~2升の蜜を納めさせたとあり、平安時代の朝廷にはちみつが存在していたのは事実。おそらく薬用もしくは神に奉げるための品であったと思われます。
江戸時代になると本格的に養蜂がおこなわれ、巣箱を用いたりして各地でニホンミツバチが飼われるようになりました。和歌山県の貞市右衛門が大成させたその旧式養蜂も、明治初期にセイヨウミツバチが入ってくると、急激に衰えます。一方近代的な器具と技術によるセイヨウミツバチの養蜂によって、はちみつの生産と需要は拡大しました。
しかし戦後、高度成長期に各地の開発が進み、農薬の使用も増えて、養蜂に適した環境が少なくなってきました。さらに中国からの安い「輸入はちみつ」とニュージーランドなどからの高価な「輸入はちみつ」に押され、残念なことに国内の養蜂業は衰えてきています。
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